「第2回黒龍江省笹川杯知識クイズ大会」についての感想文
哈爾浜医科大学 基礎医学学院 外国語学部 日本語教師 今井茂富
中国の日本語学習について
ハルビンに来て三年になりました。現在、ハルビン医科大学で日本語を教えています。日本人教師は一人です。この大学は医学を勉強する大学ですから、学生は大部分の時間を医学の学習に当てなければなりません。厚い本を抱えて、理解し、覚えなければならない項目が山ほどあります。それにもかかわらず日本語の上手な学生が何人もいます。しかも日本語を勉強する学生は大学入学後に「あいうえお」から勉強を始めた学生です。 9月に新学期が始まりますが、一年と三ヶ月後の翌年の12月には国際一級に合格する学生もいます。一年と九ヶ月後の二年生の6月に中国4級(国際二級に相当)に合格する学生はたくさんいます。では、どうしてこのような成果を上げられるのか、この点について私の得た感想を以下に述べてみます。 まず第一に、日本語を学ぶ学生は最初の一年間をすべて英語と日本語の学習だけに限定している事です。医学の勉強は二年生になってからスタートします。従って、日本語の学生は普通の学生より一年長く大学に在籍する事になります。この最初の一年間で集中的に外国語を勉強する方法が実にすばらしいと思います。この短期間に外国語を高いレベルに引き上げる事ができるからです。 第二に、中国の大学生は全寮制である点です。日本語の学生は日本語を勉強する学生同志が同じ部屋で生活しています。したがって、お互いに日本語を使って話をすることで学習効果を上げています。私も部屋に呼ばれて、日本語で何時間も話をしてくることもあります。また、新入生は寮で上級生と生活を共にしながら様ざまな事を学びます。これも新入生にとっては大きな刺激です。 第三に、外国人の先生が学生と同じキャンパス内に生活していることです。学生の寮と先生の部屋が近いので先生の部屋に来て話したり、食事を作って一緒にたべたり、質問や 学習教材について相談し、そこにある教材を貸し出したりすることが非常に簡単にできます。また、食堂で食事をいっしょにする機会も自然に多くなります。 第四に、中国の大学生は英語でも日本語でも、中国の大学卒業程度の4級(英検2級程度)に合格しないと卒業できないのです。これは大変きびしい基準ですが、学生は全力でこの試験を突破するために頑張っています。 第五に、医科大学では日本語の研究室で中国人の先生方と日本人教師の研究会が毎週一回定期的に開かれ、日本の習慣や言葉の疑問点などについてお互いに意見を交換します。また、この研究室で日本語で気楽に話ができる点も素晴らしいと思います。 主要な点については以上ですが、そのほか日本の友人の団体ツアーなどをハルビンに呼んで、学生との交流の場を作るなど、実際に日本語を使う機会を作ることも何度かしてみました。特に一年生の時点で、日本人と直接の交流をし、その後もメールや手紙で関係を持続している学生もいます。これも、大きな学習の励みになると思います。 昨年の“日本知識クイズ大会”に出場した学生は、三人とも一年と一ヶ月の日本語学習歴しかない二年生でした。今年は昨年からさらに一年の学習を重ねての出場でしたが、医学の勉強が忙しく、なかなか準備の時間が持てなかったにもかかわらず優勝できたことは幸運でした。 すべては学生の強い勉学意欲と教師のチーム・ワークの上に、良い環境作りが有効に働いた結果だと考えています。 日本科学協会の“日本知識クイズ大会”も、日本への旅行が実現するとあって、学生たちの勉学意欲を育てる上で大きな役割をはたしています。ここに心から感謝いたします。
哈爾浜医科大学 基礎医学学院 外国語学部日本語科 教師一同
日本への関心こそが日本語上達の秘訣
この度、中国東北三省第二回笹川杯日本知識クイズ大会で、当校の学生は多くの好敵手の中で、期待に沿い優勝を勝ち取りました。これは日本の皆様からいただいたご協力に最高のご恩返しをさせていただいたと存じます。この度は、各大学と日本語、日本知識を切磋琢磨し、実力を示す機会をいただき、あらためて感謝の意を表す次第でございます。皆様のご期待通り、これからの「笹川杯」は中国の日本語を勉強する学生にとって最高の祭りになるよう心からお祈りいたします。 今回、優勝した学生はすべて医学日本語治療班の生徒です。日本語治療班は長い歴史と輝かしい成績を持っております。日本語治療班の生徒は日本語専門ではなく、ただ一年間だけ日本語を専門に習い、二年目からは、医学知識の本格的な勉強に入ります。従って、今回の大会で日本語を専門に学ぶ他大学の学生を相手に、優勝できたことは、学生が日本語を心から愛するとともに平素教師が熱心に指導してきたことの証拠でありましょう。 日本語治療班の生徒は入学する前は日本語が全く分かりません。日本語を教えるより、まず日本に対して興味を湧かせるのが大切だと思っております。ですから、日本語を教えると同時に、日本知識、例えば、歴史、習慣、年中行事、地理なども紹介しています。それもただ説明するだけではなく、インターネットなどで手に入れられる資料をできるだけ利用して、いろいろな手段で日本語を身につけさせ、日本についての知識や理解を深めさせるように努力しています。すると生徒は日本に富士山、桜、ゲーム、アニメがあるというだけでなく、日本の悠久な歴史、綺麗な景色、さらには日本人の勤勉さや親切さなどについても理解してくれます。何を習っても、「好きこそ物の上手なり」で熱愛すれば、上達も早いと存じます。ですから医科大学の学生が今回優勝という結果に輝いたのはこうした平日のわずかな積み重ねと切っても切れない関係があると思います。会場ではもう一つ面白い現象が見られました。当日、会場から質問に答えようと手を挙げた学生は医科大学が一番多かったのです。 教師が熱心に指導し、生徒はまじめに習います。その結果として、年々日本語一級国際能力試験に受かる生徒は半数を超えます。全クラスが一挙に合格することもありました。これは教師と生徒の共同努力の結果だと思っております。 そして受験勉強だけでなく、コミュニケーション能力の向上も重視してきました。ヒアリング、話す、読む、書くなどを全面的に指導してまいりました。日本語医学治療班の学生は普通の学生となんとなく違う、とよく言われます。多分、言葉だけではなく、隅々まで日本の影響が染みわたっている結果だと思います。 とくに、今度の「笹川杯」クイズ大会に臨むに当たっては、日本人の今井茂富先生は文学、歴史、地理、諺など各分野の資料を集め、選手ばかりではなく、自由時間を利用して、みんなに指導するなど、クイズ大会をきっかけに更に多くの日本知識を学ばせるように頑張ってきました。ここで、心から今井先生に感謝を申し上げます。今回の優勝を得たのは当校の教師と生徒の共同努力の結果だと思っております。教師と学生が共に作り上げる精神がなければハルビン医科大学に優勝をもたらすことはできなかっただろうと思っております。 生徒は全然日本語が分からなかった段階から、いまのようにクイズ大会での優勝を勝ち取って、自分の目で日本を見られる機会をいただきました。先生にとってもこれ以上に嬉しい事はありません。これから、ハルビン医科大学の日本語教師と日本語治療班の全員は日中の友好、日中医学の交流のために、わずかの力ながら、精一杯頑張ります。
哈爾浜医科大学 臨床医学専攻 日本語班 3年 王洋 (団体戦優勝)
2年越しで勝取った優勝の栄誉
私は哈爾濱医科大学臨床医学専攻日本語班三年生です。三年前に心を弾ませてこの学校に入って、日療班で勉強してきました。同級生はみんな大学に入ってから初めて日本語を勉強しましたので、難しくてなかなか興味が湧きませんでした。私もそうでした。でも、ある国の言葉を学ぼうとするなら、最初にその国の文化を勉強したら良いと教えてもらいました。私は日本文化を勉強し始めました。勉強すればするほど興味が増えていきました。日本語もだんだん上手になりました。ちょうどそのとき「第一回笹川日本知識クイズ大会」が開かれました。でも、そのときはまだ二年生でしたから、日本語も、日本知識も十分ではありませんでした。良い成績を取れませんでした。私は、あきらめないで、そのクイズ大会をいい経験にして、もっと頑張って日本文化を一生懸命勉強しました。 楽しみに待っていた今回の「第一回笹川日本知識クイズ大会」はやっと行なわれました。優勝できるとはぜんぜん思わなかったです。ただ、自分の習った日本知識を試して、もっとたくさんの知識を手にいれたら十分だと考えて、平静な心を持って大会に参加しました。意外にも優勝して、それから日本へ行けるようになりました。本当にうれしくてたまらないです。 これから日中関係はもっと緊密になると信じています。私は自身の日本知識を生かして、日中友好に微力ながら頑張っていこうと思います。
哈爾浜医科大学 臨床医学専攻 日本語班 3年 李可心 (団体戦優勝)
新たなドアを開いてくれた日本語
私は今ハルビン医科大学で勉強しています。大学に入ってから日本語を習い始め、今では自分の一部分になっています。これを通してだんだん日本の文化から日常生活まで興味を持っています。それに中国と日本は古い時代からずっと交流がありますので、お互いに深い影響を与えてきました。更に日本という国が中国文化を学び独自な文化を発展させました。 勉強すればするほど知りたいものが多くなりました。日本語が本当に新しい門を開いてくれました。私にとっていろいろな知識が身について新しい考え方をすることができるようになりました。 今回「笹川杯」クイズ大会に優勝することをきっかけに日本を見学することができますのでとてもうれしかったです。今まで雑誌とか写真とかによる表面上の日本を理解するしかなかったです。今度はやっと「生きた日本に触れられるな」と思いました。「ありがとうございます」と日本財団、日本科学協会をはじめ先生方に、お礼を言いたいと思います。絶対このチャンスを生かしてこれからもっと一生懸命知識を勉強して日中友好に自分の力を尽くそうと決心しています。
哈爾浜医科大学 脳外科 大学院1年 李一 (団体戦優勝)
日本に関する理解を深め日中医学交流に尽力したい
私は李一と申します。1999年ハルビン医科大学に入って、日本語を勉強し始め、今まではもう6年になりました。今、私はハルビン医科大学大学院一年生で、専攻は神経外科です。 私は日本語と日本文化に興味があります。このたびのクイズ大会を通して、私の日本に関する理解は深くなりました。それに、先生方、私三人選手、みんなの努力で、優勝となり、本当にうれしかったです。でも、憧れの日本を自分自身で体験できることは、日本財団、日本科学協会を始め関する皆様のおかげだと思っております。心から感謝いたします。これからもっと頑張りますから、日中の医学交流に力を尽くします。
黒龍江大学 日本語学院 4年 杜雪松 (司会者)
「笹川杯クイズ大会」を通して
「これにて、第二回笹川杯日本知識クイズ大会を無事終了いたします。また、来年の選手達のご活躍を期待しております。」と口から出す瞬間、私はほっとして、重い荷物を肩からおろしたように感じていました。しかし、そのような気持ちは長く続きませんでした。もともとはクイズ大会が終わったら、とにかく何も考えなく、布団に潜ってぐっすりと眠り込むつもりでしたが、会場から寮へ帰る道で、予選から決勝戦にかけて、私のこの大会のためにしたいろんな準備と努力がなんとなく心に浮かんできました。 最初、「今回のクイズ大会の司会をあなたに担当してほしい。」と院長先生に言われた時、私はただ司会者という仕事を面白そうに考えて、すぐ引き受けました。高校時代にクラス委員をやっていた関係で、司会者を何回も担当したことがありました。なので、予選を間近に控えても、私は、まだのんびりして、真面目に準備したことがありませんでした。 予選前二日目、先生に向かって本番のようにリハーサルする時、案外に、私のアクセントにしても、長音短音にしても、指摘された間違いが沢山出てきました。その時に、もちろん誇りに傷つけたと感じましたが、自慢が破られたからこそ、不思議に体の奥から名状しがたい情熱が燃えてきて、「黒竜江大学にも、自分にも恥をかくわけにはいかない」としか考えなかったのでした。すると、先生の指導で、二日間必死に練習した結果、何とか予選会を無事終了しました。 予選の教訓を得て、決勝戦前二週間に、私は準備を始めました。予選と比べて、先生は私に対する要求が何倍も厳しくなりました。練習する時、一番怖く感じるのは先生の「ちょっと待って」と私を止める声でした。その時の「ちょっと待って」は私にとって「どうかしたの?また間違った」の叱りに他ならなかったのです。涙が出そうになる時もありましたが、我慢して何百回の「ちょっと待って」の辛さを重ね、やっと先生の笑顔が見られるようになりました。その笑顔は二週間で溜まった疲れを癒してくれた名薬だけではなく、短気な私がその二週間の間に忍耐力を鍛えられた証でもあるのではないのでしょうか。 クイズ大会を通して、参加した皆がきっとそれぞれに収穫を得ることができるのでしょう。私にも、自分はまだ日本語学習のスタートラインから出発したばかりで、これからの道は決して平らな道ではないということを意識し始めました。そして、今後は、どんな挑戦に向かっても、どんな境遇に身を置かれても、最も大切なのは、諦めないで着実に一歩一歩に目標に進んでいく姿勢なのであることをこの身でしっかりと覚えてきました。